第四話 アクセルの力 05



その後、両手を正面にかざしたセレーラルは一つ深呼吸をする

すると両手から現れた水色のラインを先行に、そこから溢れ出る黒色の塗料が手の中をに浸食し、銃の形を形成していき、先の戦いでも使用した二丁拳銃『オブロンズスカイ』を手の中に出現させる


「そしてこれが『アクセルウェポン』
人によってそれぞれの形を持つけど、武器の持ち運びをしなくてもいいのが利点かな
だけど、手から離れたら消えちゃうからそこが難点か、なっ!!」


言葉尻に右手の銃を屈んだ後に上へ放り投げると、手から離れた瞬間に空気に溶けるように四散した

そして、掴むものが無くなった右手をゆっくりと下ろしていく


「手から離れるというよりかは掌の『アクセルライン』が途切れたら形が保てなくなるんだけどね」

「おかげさまで投げつけることも出来ねーしな
それなりに重量が変えられるのに、投擲できねーのは残念だ」


アーシェリが『アクセルウェポン』の難点に愚痴を零すとセレーラルが空になった右手をゆっくりと前へ動かしながらアーシェリに語りかける


「だけど、霊気さえあれば瞬時に武装できるのはこの力の利点だよ
奇襲にも対応しやすいし…一瞬の攻防に備えられるのがいいかな」


説明しながら、セレーラルが下ろしたその右手を持ち上げたときには消えた筈の銃がいつの間にか握られていた

まるで四散して消えていったのが嘘だったかのように

「更に『アクセルウェポン』の中に独自の『アクセルライン』を展開させることができるから武器を経由して発生する『ブランチアクセル』は攻撃の形状を変えることだってできるところも立派な利点さ」


セレーラルは『ブランチアクセル』を行使してレーザーを撃つことが苦手だった
ましてや連射なんてもってのほか

しかし、それを可能にしたのは紛れもなく『アクセルウェポン』である『オブロンズスカイ』の恩恵である

それは、人体では既に『アクセルライン』の通り道が固定化されており、ラインの組み替えが不可能とされるが、『アクセルウェポン』は外の形状さえできていれば中のラインの組み替えがある程度変幻自在にできる為だった

「瞬時に防御として使うこともできるし、『ブランチアクセル』の補助まで出来るだけでもマシか…私としちゃー投げつけてーんだけど」

「ゴリラめ…」

「なんか言ったかー…」

「きのせいだよ、自意識過剰だ」


この場でも折り合いの悪さを発揮するアーシェリとシェリエールが静かな火花を散らしながらお互いを睨み合う

そんなものは関係なしにセレーラルは人差し指をたてて眼前に突き出しては口を尖らせた


「しかーし!これには会社で支給されている武器と違って難点があるのさ!」

「『サイドオプション』が取り付けられない、だろ?」

すぐさまゼオンがセレーラルの言葉に繋げる形で反応し、それを聞いたセレーラルが少し驚いた顔を見せると


「そのとおり!流石ゼオ姉、博識じゃないか!」

「いや、お前ちょっと馬鹿にしてるだろ」


はっはっはーーーと大袈裟に笑う素振りを見せながらセレーラルは『サイドオプション』に関する説明を付け加えていく

『サイドオプション』とはカンパニー産業国で作られている独自の装置で、『アクセルライン』を通る霊気を流し込んで自動的に能力を発動させることができる

繊細な装置である『サイドオプション』は『アクセルウェポン』に取り付けても専用の取り付け箇所がなく、取り付けられたとしても『アクセルライン』のブレが僅かながらある為、不発や誤作動といった使用者自身に危険を及ぼす可能性がある

それに対して専用の人工的な武器の中に内蔵された『アクセルライン』は、擬似的とはいえ既に固定化されているラインなので、あらゆるの『サイドオプション』を装備して狙った能力を発動させられるのが大きな利点である


「ーーーとまぁ、『サイドオプション』に関してはこんな感じだけど、最近じゃ『アクセルウェポン』に取り付ける為の『サイドオプション』を開発中らしいよ」

「えっ?」


一通り説明をしていたセレーラルを前に、彼女が最後に言った『アクセルウェポン』専用の『サイドオプション』が開発中であると言う話は誰も知らなかったようで、他の四人はそれぞれ驚いた反応を示していた