第4話 アクセルの力 07



つまるところ体内にある霊核から流れる霊気は体の外に放出する際、体そのものが霊気の流れを抑制し、一気に大量の霊気を放出しにくくなっているが、体外の霊核はその縛りが無く、霊気量が許す限り膨大な量を放出可能ということである


「でも、霊核を外に出して留めておくだけでも膨大な霊気を使うし、外に出した霊核は自動的に霊獣も発動しちゃうから尚のこと扱いがシビアなんだよね~」


セレーラルがわざとらしく右手を後頭部に回して困った表情を演じる後ろで、セレーラルの霊核から蠍に似た形をした20もの砲門を持つ髑髏の霊獣が姿を覗かせる

霊獣とはいっても必ずしも獣の形をしている訳ではなく、剣や樹木などといった獣とは程遠いものも存在し、一律して『神器霊核』の中から現れる形があるものを指す


「別に発動させなくてもいいんじゃねーか?」

「まぁまぁ、実演も兼ねてってことだよ」


アーシェリの言葉に答えながらも『神器霊核』の発動を取り消さない姿勢を保っていたセレーラルだが、『神器霊核』の維持するのに負担がかなりかかるようで、結局は直ぐに霊核を消して溜息を零す


「と、こんな感じで発動し続けるのに負担がかかりすぎるのが難点かな」

「そりゃそーだわな
あと『神器霊核』の中でもレベルがあるんだったよな?」


椅子の上で胡座をかいているアーシェリは台詞を口にするのと同時に、問いかけるようにゼオンへと目配する


「そうだけど、あれは親父がレベル別に分けただけで、明確に分けられている訳じゃないぞ」

「あれ、とーちゃんの発案だったの?」


『神器霊核』のレベル別の区分けを取り決めたのは『九人姉妹』の父、カイン・ジークフリートだったことはセレーラルも知らなかったようで目を丸くする

そしてそのレベルについてーーー
『level1』ーーー
『神器霊核』の中から現れる霊獣が『メインアクセル』を持たないもの


『level2』ーーー
霊獣が独自のメインアクセルを持っているが、『神器霊核』と霊獣をアクセルラインで繋がっており、切り離すことが出来ないもので、セレーラルの『戦車砲』がこれに該当する


そして、ゼオンの『五頭昇龍』が当てはまる『level3』はーーー
霊獣自身に小規模な霊核を具現し、アクセルラインで繋ぐことなく遠隔操作が可能で、必要であれば『神器霊核』とアクセルラインで繋いで霊気の補充ができるというものである

更にはその霊核を暴発させて爆発を起こさせて相手を攻撃するという手段も持つ


以上の説明をゼオンが四苦八苦しながら説明し終えると、セレーラルが挙手してゼオンに一つ訪ねる


「これで一通り能力の説明が終わった訳だけどゼオ姉、確か『神器霊核』について新しくわかったことがあったんだよね?」

「ああ、そうだ」


それこそ、今回の集会における一番の目的である
紫髪の悪魔との戦いの折、悪魔が口にした言葉を基に行い、ゼオンが実践して得たものをみんなに浸透させる為に


「む?そうなのか?」


これまで話半分といった態度で説明を聞いていたシェリエールがここに来て言葉に感情を込め、身を乗り出して真剣な顔つきに変わる

セレーラルとマレーシャはその現場に居合わせており、アーシェリは内容こそ聞いていないが、帰りの道でそういった発見があったことを既に聞いていて驚きの態度を示さなかった為、シェリエールの反応が尚のこと際立っていた

そしてシェリエール以外にも初耳だった者がもうひとりーーー


「あーっ!それあうりんも聞きたい!」

「うわあっ!!」


いつの間にか真剣な集会の場と化していた空気を破壊するかの如く、突然元気よく響いた声と共に戦闘服に着替えたアウリがみんなの後ろに現れて大声を上げ、いきなりの出現に驚いたシェリエールが椅子から勢いよく転げ落ちた