第4話 アクセルの力 08



「おい、ばかちび!いかなりこえをあらげるな、びっくりするだろう!」

「ねぇねぇしぇりちゃん、今日の晩ご飯は何だと思う?ヒントはね、カレーライス!…じゃなくて、白色に茶色を乗っけたものなんだ!」

「話をきけー!」


アウリとシェリエールはゼオン達が紫髪の悪魔に負けた反省ということでこの集会の場を開いたことを知らなかったが故に軽い気持ちで騒ぎながら参加していたが、ゼオンが無言で二人の肩をそっと叩いてその場を落ち着かせる

特にアウリには人差し指を彼女の口元に立てて声量を抑えるようにと促す

そうして二人が落ち着ついた様子を見せるとゼオンが口を開いた


「それで続きだけど、オレの霊獣があの悪魔に絡みついた時だと思うんだけど、なんかあいつの霊気を霊獣が吸っていたような感じがしたんだよな~…攻撃に夢中だったからどうやったのかは覚えてないけどな」

「ん~…」


セレーラルもゼオンが言っていたことを実践したことも無く、知識として知っていた訳ではないので分からず仕舞いだが、ある程度の憶測は立つ


「もしかして相手と霊獣が接触していたからかなぁ?アーシェリとアウリとシェリーはどうかな?三人とも超近接戦用の霊獣だし」

「いや、今のところ私はねーな
そもそも知ってたら話してるだろーし、『神器霊核』を使わざるを得ねーような状況なんて一人で修行するとき以外ねーから、分かんねーよ」


アーシェリが言葉を返した後、セレーラルは目線をアウリとシェリエールに移すがアーシェリと同じようで、無言のまま頷き返していた

更に付け加えると、九人姉妹にとって切り札ともいえる『神器霊核』の発動と維持は負担がかなり大きく、積極的に修行を長時間行なうことが出来ないという面も挙げられる

一つアテが外れたセレーラルはもう一つ可能性のある憶測を口から出す


「じゃあ、アレかな?」

「アレって?」

「確かゼオ姉の霊獣は霊核を持っているから吸収できたのかもね、原理はよくわからないけど」

セレーラルが言う通り、ゼオンを含めて全員が『神器霊核』の原理についてよく理解できておらず、説明にストップがかかる

間を暫く開けて、アーシェリが論より証拠と言わんばかりに一つ提案する


「結局実際にやってみねーと分かんねーから、一度やってみねーか?」

「そうだな…なぁアーシェリ、一回頼めるか?」

「え!?あたしか!?…別にいーけど…」


悪魔との戦闘時に相手の霊力を吸収した時、ゼオン達三人は戦いに無我夢中で、実際にその事実をしっかりと確認できていた者は誰一人としていなかった

その事実を解明すべく、アーシェリとゼオンがお互いに頷き合うと、席を立って少し離れた周りに物が置いていない場所でお互いに距離を取る

この広い空間で充分に距離を開けたのを確認したアーシェリは腰を落とし、瞬間的な突風を発生させて、同時に紫色の霊気を勢いよく身体中から放つ

まるでゼオンの攻撃をその身で受け止めるような構えをとるように

その顔は若干恐怖にひきつっていたが


「よーし、こっちはいーぜ!」

「そう身構えるのはいいが、攻撃なんてしないから安心していいぞ」

「分かっていても、こえーもんは怖えんだよ」


強がる姿勢を見せるアーシェリの前にゼオンはかつてのように、両手首に赤い輪が現し、更にそこからアクセルラインで繋がれた円盤ーーー『神器霊核』を背後に展開する

その円盤から次々と龍の顔が覗くように表に出てくると、その存在感に圧倒されたアーシェリが冷や汗を浮かべた

例え攻撃しないと分かっていても格上である姉の切り札を前に圧巻されていた

そんな状態の中、ゼオンが一体の龍をアーシェリに向けて放つと彼女の体に全身を使ってしがみつく


「うわっ…!」


小さな悲鳴をあげて、咄嗟に眼を瞑って身構えたまま我慢すること約十秒じっと体を強張らせる