第4話 アクセルの力 06



「じゃあいつかオレ達も使う日がくるかもしれないのか」

「技術の進歩ってやつだな」

「まだ開発段階だし、私たちは『サイドオプション』は使わないから、一先ずおいとくとして、本題の『神器霊核』の話題に移るよ」


『神器霊核』ーーー
セレーラルが口にしたその能力は世間的にも未だ謎の部分が多い能力

ジークフリートの血族にしか使えず、『メインアクセル』のように認知性の高い一般的な能力とは違い、非常に強力な力である


「そうだな、今日はそいつの実験の為に集まってもらったようなもんだからな」

「ん?なんでだ?」


ゼオン達の任務であの悪魔との戦いでゼオンが得た経験について、今までの経緯を唯一聞かされていなかったシェリエールはセレーラルとゼオンのやりとりを理解出来かねていた


「言ってなかったか?オレは今日の任務でみんなが知らない『神器霊核』の力を知ることが出来たから、その復習の為に集まってもらったんだ」

「わたしは、あのくそばかに脅迫されて仕方なくついてきただけだ」


そう言ってセレーラルに指を刺すシェリエールを見たゼオンはセレーラルに懐疑的な眼差しを向けたまま問い詰める


「おいおい、お前またシェリーに何かやったのか?」

「酷いよゼオ姉、まるでわたしがいつも酷いことをしてるような発言して!」

「何言ってんだ、いつも罰ゲームとか言ってちょっかいかけている癖に」

「だからおまえは『くそばか』なんだ」


『くそばか』は関係ねーだろーー
そう口に出すとまたシェリエールに因縁を吹っかけられるので、アーシェリは彼女に見られていない横でシェリエールを見ながら沈黙する


「アレだよ、シェリーがゲームをクリアできないって泣きついてきたからクリアする約束をしてたんだけど、この集会に来なかったら約束を無かったことにするって言っただけだよ」

「おい!おまえそれいうなっていったじゃないか!」


セレーラルがシェリエールに対する脅迫内容を自然に暴露すると、さっきまでセレーラルを問い詰めていたゼオンの熱が急激に下がっていった

対照的にシェリエールは体温が沸騰するように顔を真っ赤にして抗議するも、言葉が続かず魚のように口をパクパクさせている


シェリエールも自分の力の向上心は人並み以上に強く、本当の目的を言えば間違いなくついてくるだろうが、それを言わずして軽い脅迫するあたり、アーシェリから見てもセレーラルの人の悪さが伺える

もしかしたらゲーム苦手のシェリエールがセレーラルにしかクリアできない難しいゲームを攻略するように頼んだのかもしれない


「とりあえず先に話を進めよーぜ」


止むことなくシェリエールがセレーラルに抗議の声を上げ続ける中、業を煮やしたアーシェリが先を促す


「ごめんごめん、ささっ、おチビちゃんもさっさと席について!皆さんがお持ちかねだよ!」

「またせてるのはおまえだろ!」

「はいはい、ストップストップ」


今にも本当に食ってかかりそうなシェリエールをゼオンが抱えて無理やり席に座らせ、その横では独り静寂な雰囲気を保ちながら静かにマレーシャが欠伸を晒している

そんな状況の中、セレーラルがわざとらしく咳を立てて場の雰囲気に区切りをつけて周りを見渡した


「えーっと、それで『神器霊核』のことだけど、いいかな?」

「ああ、いいぞ」


前に座る四人が聞く姿勢を示しているのを確認すると能力に関する説明を再開した


「まず、みんな知ってる通り『神器霊核』は体内にある霊核を外に出すことから始まるんだけどーーー」


ゼオンやセレーラルが前の戦いで背後に現した円盤状のものが外に出された霊核であり、そこから伸びた線が両腕に繋がっていたときと全く同じように、水色の霊気を放ちながらセレーラルがこの場で体現する


「まずは外に出した霊核を『アクセルライン』を通して体に繋げると」


その威圧感はかなりのもので、場の静寂を打ち破るようにセレーラルを中心にあたりの空気が風となって集まっていくような錯覚を起こさせていた


「そして、外に剥き出しになっている霊核は、身体という外壁に霊気の流れを阻まれることはないし、『アクセルライン』を通さずに直接霊核から外に放出できるから、使用者の霊気量に比例して幾らでも身体の外側に霊気を纏うことができるのが利点かな」