「へぇ…じゃあオッチャンは国の中央庁の近くだけじゃなく、ここら辺でも商売してるのか」
「田舎出の商人なんてそんなものさ」
「因みに何を売ってるんだ?なんか凄いトレーニング器具とかあるんだろ?」
「えっ?」
「一般には出回っていないような超絶重量のダンベルとかVRなんとかによる、なんとかの基礎体感の向上トレーニングとか?」
「いやいやいや、そんなもんは売っていないよ!
まず田舎の商業に対してだったら普通そんなものは売ってないと思うでしょう
それを、さも当たり前のように言われても」
「なんだ、そうなのか…」
少し期待していただけに肩をおとすゼオンにどう反応を返したらいいか、戸惑いを感じている中、後ろからアーシェリが腕を組んで姉の発言に呆れていた
「そんなもん売ってる訳ねーだろ、話が飛躍しすぎじゃねーか」
「田舎の商品といったら骨董品のイメージがあったから」
「そもそもVRって骨董品って呼ばれるほど古くねーと思うんだが」
世間知らずのゼオンの言動に振り回されてつづけながら男性はハンドルを手に暫く山を降ると目の前の森が開け、小さな町が前方に現れる
森の中では立て続けに暗い曲がり道をトラックで走らせてきたが、ここに来てようやく真っ直ぐで様々な灯りに照らされた明るい道が続いていた
その道を走っていると、道路脇に立ち並ぶ数ある建物の中、目的地である『ラーメン強士』と大きな文字で派手に書かれた看板を掲げる店を発見するとその駐車場に入っていく
「よし、着いたぞ。この店は味にも強い、遠慮なく食べてってくれ!」
「じゃあ、お言葉に甘えて、ご馳走になります!」
助手席のドアを開けて店の扉の前まで歩いていくと、ゼオンと男性はそのまま店の中へ入って足を止めた
その後ろでは先ほどまで軽口を叩き合ってお互いを罵倒していたアーシェリとシェリエールが黙りこみながらゆっくりとトラックから出てくる
どうやらお互いに傷つけ合って双方共に意気消沈してしまったのだろう
「おいおい、お前らなぁ…」
そんな様子を見ながら二人の姉であるゼオンはその間に入ってやれやれと呆れたの表情をしながら二人の肩を抱き寄せる
「今日はオッチャンが気を使ってラーメンを奢ってくれるんだから、余計な気を使わせちゃダメだぞ?な!」
「うん…」
「あ、あぁ…そーだな」
「さ、メシだメシ!ほら、さっさと行くぞ!」
「…懐かしいなぁ、私も若かった時はよく弟と喧嘩したもんだ…」
そんな三人の様子を懐かしみながら見ていた初老の男性はつい、タバコを出しては吸うことなくしまいこんでは、三人の後に続いて店へと入っていく
「蜂を捕まえてはお互いに蜂の刺し合いをして、病院に運ばれたこともあったっけ」
そう小言を誰にいうわけでもなく呟く男性の顔はその内容に反して穏やかな表情をしていた